コラム
訪問介護事業者の苦境~相次ぐ撤退とその背景~
はじめに
近年、訪問介護事業者の廃業が相次いでいると言われています。
ご高齢者が安心に自宅で暮らし続けるために欠かせないのが訪問介護ですが、訪問介護事業者の相次ぐ廃業はなぜ起こっているのでしょうか。
今回は訪問介護事業の現状と、廃業が増えている背景について考えてみたいと思います。
訪問介護事業者の廃業・倒産の状況
老人福祉・介護事業者の倒産が、2024年で過去最多となっているのはご存じでしょうか。
これまで最多だった2022年の件数を大きく上回っているのです。その中で下記グラフ(図1)の2024年の倒産件数を見ると、全体で172件のうち、訪問介護事業者が81件と全体の約47%を占めていることがわかります。しかも日本はすでに「2025年問題」(※1)に直面しており、このままでは介護サービスの担い手が不足し、「介護難民」が生じる可能性も否定できず社会問題になっています。

団塊の世代約800万人が75歳以上になることで生じる、労働者の不足や医療費・介護負担の増大、社会保障制度の維持困難(年金)などの様々な問題の総称。
(図1)引用:東京商工リサーチ「2024年「介護事業者」倒産が過去最多の172件「訪問介護」が急増、小規模事業者の淘汰加速」より➚
参考:東京商工リサーチ「2024年「介護事業者」倒産が過去最多の172件「訪問介護」が急増、小規模事業者の淘汰加速」より➚
廃業せざるを得ない主な要因とは何か
なぜこのように多くの訪問介護事業者が廃業や倒産に追い込まれるのでしょうか。その要因について見ていきましょう。
人手不足
訪問介護事業者の倒産の要因には労働者の不足が挙げられます。新たな若い世代の職員の確保が難しい一方で、現在働いている職員の高齢化ばかりが進み、結果として「人が増えない」状況が要因のひとつと考えられます。
令和6年12月に厚生労働省老健局が社会保障審議会介護給付費分科会に報告した内容(図2)では、「人員の不足」が訪問介護事業の休止または廃止の最大の要因となっており、これは中山間や離島などがある自治体の調査でも、同様の結果が出ています。

(図2)引用:厚生労働省「令和6年社会保障審議会会議給付費分科会(第243回)」より➚
訪問介護基本報酬の引き下げ
厚生労働省は令和6年度に「令和6年度介護報酬改定」(※2)を行いました。その中で訪問介護における基本報酬の改定を行っています。
下記表(図3)の改定内容をみると、すべての項目で2単位~9単位少なくなっています。まさにこれが訪問介護の基本報酬の減額を意味します。これによって訪問介護事業者の収益が減少し、経営が厳しくなっていることが考えられます。
介護保険の基本報酬とは、訪問介護事業者が訪問介護サービスを提供したときに、対価として得る介護報酬(サービス費用)のうち、加算及び減算をしない「基本部分」のことを指します。介護報酬は、設定された単位数×10円を基本として事業者に支払われるものであり、それぞれのサービス別、地域別に割合が上乗せされるように定められています。
このように、訪問介護事業者の廃業・倒産の背景には、深刻な人員不足と、訪問介護報酬の減額による経営難などが挙げられます。

(※2)参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」より➚
(図3)参考:社会保障審議会「介護給付費分科会第239回(R6.1.22)」より➚
廃業・倒産の増加より考えられる影響
訪問介護事業者の廃業・倒産が増えれば、在宅での介護サービスを必要としている利用者の方が「訪問介護難民」となってしまう可能性があります。サービスを受けたくても受けられない状態が頻繁に起こってしまう状況になりかねません。
まとめ
訪問介護は住民や地域にとってなくてはならない存在です。現在多くの事業者が、厳しい経営を余儀なくされています。訪問介護事業を続けるためには人員不足を解決する必要がありますが、そのためには事業者による職員の待遇改善などの手当てが重要となります。にもかかわらず、訪問介護基本報酬は引き下げられており、待遇改善のための原資の確保は困難になっています。この状況を打破するためには、基本報酬の引き上げを含め、国や行政による事業者の更なる支援強化が求められます。
このまま放置すれば要介護者本人だけでなく、そのご家族も負担が増す状況になりかねません。
この問題に対してわたしたち一人ひとりが関心を持って「どうすべきか」を考える必要があるのではないでしょうか。みんなが安心して暮らせる社会を実現・維持するために、この問題を引き続き注視していくことが重要だと考えます。
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