コラム
理学療法と作業療法の違いとは?目的や治療方法、対象者などを分かりやすく解説します
病気やケガ、加齢によって心身の機能が低下した際、回復の基盤になる役割がリハビリテーションです。その中でも、身体の動きを取り戻す「理学療法」と、日常生活や社会活動への復帰を支援する「作業療法」は、特に重要視されています。
本記事では、両者の目的・方法・対象者の違いについて分かりやすく解説します。リハビリテーションを受ける際の選び方や、受けられる場所についてもご紹介するので、ご家族の療養方針を検討する際はぜひ参考にしてみてください。
理学療法と作業療法がリハビリテーションの基本
リハビリテーションにはさまざまな種類があり、なかでも生活の回復に大切といわれているのが理学療法と作業療法です。どちらも身体や心の機能を取り戻し、自分らしい生活を再び送るための中心的な役割を担っています。
主としてそれぞれ、理学療法は「動く力」をつけ、作業療法ではそれを応用して「生活する力」を取り戻していきます。例えば、理学療法で歩行能力を回復させたあと、作業療法で買い物や調理動作の練習を行うといったイメージです。つまり、両者は連携しながら、心身の自立を支えるリハビリテーションの両輪といえるでしょう。
理学療法とは
「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。
(出典:理学療法士及び作業療法士法第2条より)
理学療法は、運動や物理的刺激を通じて、立つ・歩く・座るなど、日常生活の基本動作を取り戻すためのリハビリテーションです。病気やケガの回復期だけでなく、高齢による筋力低下や慢性疾患の進行予防など、幅広い目的で行われています。
主な目的
理学療法の主な目的は、病気やケガ、障害や高齢により、運動機能が低下した方の回復・維持・悪化予防を図ることです。立つ・座る・起き上がる・歩くといった基本的動作を取り戻し、生活の中で動かせる体を目指します。また、筋力や関節の柔軟性を高め、転倒や再発を防ぐことも重要な役割といえます。
治療方法
理学療法では、症状や目的に応じて多様な治療方法が用いられます。代表的な手法には、以下のようなものがあります。
・運動療法:筋力トレーニングやストレッチ、歩行練習などを行い、筋力やバランス能力を高める
・物理療法:温熱・電気・超音波など機器を使い、痛みやこわばりを和らげる
・関節可動域訓練:硬くなった関節を動かしやすくし、スムーズな動作を取り戻す
・バランス訓練:立位や歩行時の安定性を高め、転倒予防につなげる
・呼吸訓練:呼吸筋を鍛え、肺機能を維持・改善する
例えば、脳卒中後で手足の麻痺が残る方には、関節を柔軟にする訓練と立ち上がり動作の練習を組み合わせるなど、個別の症状に応じてプランが立てられます。
このように理学療法は、身体機能を段階的に回復させるための総合的なアプローチといえます。なお、治療内容や回復のペースは、年齢や症状、体力などにより個人差があります。
治療の対象者
理学療法は、身体に障害がある方、高齢による筋力低下が見られる方、基本動作に支障がある方など、あらゆる症状・年代が対象です。例えば、脳卒中や骨折の回復期、変形性関節症などで関節の動きが制限されている方、加齢による筋力低下や転倒リスクの高い高齢者の多くが、理学療法を受けています。
また近年では、がんや難病を抱える方に対しても、身体機能の維持や痛みの軽減を目的としたリハビリテーションが行われています。
このようなケースでは、身体機能の回復を目指すだけでなく、穏やかで自分らしい時間を過ごせるよう支えることが、理学療法の大切な役割となります。ただし、リハビリテーションによる改善の程度や効果には、個人差があることを理解しておきましょう。
理学療法を受けられる場所
理学療法は、病院・クリニック・介護関連施設・在宅(訪問リハビリテーション)など、さまざまな場で受けられます。急性期病院では、手術後や外傷の早期回復を目的に行われ、介護老人保健施設やデイサービスでは、体力維持や転倒予防を中心とした訓練が実施されます。
また、在宅で生活する方には、理学療法士が自宅を訪問してリハビリテーションを行う、訪問リハビリテーションもあります。
作業療法とは
作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。
(出典:日本作業療法士協会)
この定義のとおり、作業療法は「人は作業を通して健康や幸福になる」という理念に基づく支援です。ここでいう「作業」とは、食事・家事・仕事・趣味など、日常生活の中で目的や価値を持つ行為のことであり、そうした作業を通して、心身の回復と生活の再建を目指します。
主な目的
作業療法の主な目的は、基本的な作業能力・応用的な作業能力・社会の中で適応する能力の維持・改善にあります。具体的には、食事・入浴・着替えなどの日常動作をスムーズに行えるようにし、さらに仕事や家事、趣味活動など、応用的な作業を通じて自立を促します。
また、他者との関わり方や、社会生活に必要なスキルも育むことで「その人らしい生活」を取り戻す支援を行います。身体面だけでなく、心理面・社会面を含めた総合的なリハビリテーションが作業療法の特徴です。
治療方法
作業療法では、日常動作の訓練や作業を用いたリハビリテーション、認知機能訓練、精神的サポートなど、多角的な方法を用います。食事や入浴などの基本動作を練習するだけでなく、料理・手工芸・園芸などの作業を通して、身体の動きや思考力を改善します。
例えば料理では、材料の準備や手順を考えることで、効率のよい手順を思考し、スムーズに物事を進める訓練が可能です。このように、作業療法は、活動そのものを治療手段とすることを特徴とします。なお、実際の効果や到達度は、身体機能や環境、生活背景により個人差があります。
治療の対象者
作業療法の対象者は幅広く、身体障害・認知症・うつ病・アルコール依存症などの精神障害・発達障害・高次脳機能障害を持つ方など、あらゆる症状・年代が対象です。脳卒中後の麻痺や認知症による記憶障害、心の病による生活意欲の低下など、それぞれの状態に応じて支援が行われます。
特に、病気や障害によって「以前のように生活できるイメージが湧かない」と感じている方にとって、作業療法は再び社会に参加するための大切なステップとなります。ただし、支援の内容や回復の進み方には、個人差があります。
作業療法を受けられる場所
作業療法は、総合病院やリハビリセンター、精神科病院、障害者支援施設、特別支援学校、介護老人保健施設、地域のデイサービスなどで行われています。
病院では退院後の生活に向けた機能回復訓練が中心となり、障害者施設や特別支援学校では、個々の発達を支援し、社会生活に適応できるようサポートします。また、高齢者施設やデイサービスでは、生活リズムの維持や認知機能低下の予防を目的に実施されるのが特徴です。
理学療法・作業療法を受けるには?
理学療法や作業療法を受ける場合は、まず医師の診察を受けて、必要性を確認しましょう。医師がリハビリテーションの適応を判断し、理学療法士または作業療法士に指示を出します。その後、紹介状を持って医療機関やリハビリセンターなどで予約を行い、専門職による評価と個別プランに基づいた治療が始まります。
まとめ
理学療法と作業療法は、失われた身体機能や生活能力を回復させ、自立した生活を取り戻すための治療法です。理学療法は基本動作の改善、作業療法は日常生活や社会活動への適応を支援します。いずれも、医師や専門職のサポートのもとで継続することにより、心身の機能を高め、生活の質(QOL)を維持・向上につながります。
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