コラム
ターミナル期のQOL向上に必要なケアとは?具体的な内容や受けられる場所について解説
ターミナル期とは、病気の回復が見込めず、関係者が死を予測して対応を検討する時期を指します。この時期に大切にされることが、QOL(生活の質)の向上です。痛みや不安を和らげる身体的・精神的ケアに加え、経済的・社会的なサポートが欠かせません。
本記事では、ターミナル期のQOLを高めるために必要なケアや受けられる場所、費用の目安まで解説します。大切なご家族の最期の時間をより安らかで満ち足りたものにするために、ぜひ参考にしてみてください。
ターミナルケア(終末期医療)とは?
ターミナル期は、病気の回復が難しくなり、残された時間をどう過ごすかが焦点となる時期です。本章では、ターミナルケアの定義や緩和ケアとの違い、そして患者様がたどる心理的特徴について解説します。
ターミナルケアの定義
ターミナルケアとは、病状の回復や延命を目的とするのではなく、余命が限られた方ができるだけ穏やかに生活できるよう支援する、医療・介護の総称です。具体的には、痛みや呼吸困難などの身体的苦痛を和らげる処置、心理的な不安を減らすサポート、ご家族が安心して患者様を見守れる環境づくりなどが含まれます。
緩和ケアとの違い
ターミナルケアと緩和ケアは、提供される時期に違いがあります。緩和ケアは、がんなど命に関わる病気と診断された時点から始まり、治療と並行して苦痛の緩和を行います。一方、ターミナルケアは病状が進行し、回復が見込めない終末期に焦点を当てたケアです。つまり、緩和ケアはより早期から広く適用され、ターミナルケアは人生の最終段階を対象にした支援といえ、両者は連続性を持つものであり、明確に線引きされるべきものではないともいえます。
ターミナル期の患者様の特徴
ターミナル期の患者様は、心の中で死と向き合う過程をたどるとされています。その流れを、心理学者キューブラー=ロスは「死の受容の5段階」と説明しています。
<死の受容の5段階>
①否認(現実を受け入れられない)
②怒り(なぜ自分が?と感じる)
③取引(神や医療者に対して「生きられるのであれば何でもする」と願う)
④抑うつ(絶望や悲しみが強くなる)
⑤受容(最期を受け入れる準備を整える)
これらの心理状態は、必ずしも順序通りではなく、個々の状況により前後します。医療者やご家族は、このような心の変化を理解し、適切に寄り添うことが求められます。
なお、この理論は参考のひとつであり、すべての人が同じ家庭をたどるわけではありません。個人の性格や経験、文化的背景や家族関係等によって、反応は多様なものとなり得ることに留意してください。
ターミナルケア(終末期医療)の内容
ターミナルケアでは、患者様が最期まで快適に過ごせるよう、身体的・精神的・社会的な側面から多角的に関わり、生活の質(QOL)を維持・向上させることを目指します。本章では、それぞれの具体的な内容について解説します。
①身体的なケア
身体的なケアは、痛みや不快感を和らげ、日常生活を少しでも快適に過ごせるように整える取り組みです。主な内容は、以下のとおりです。
<身体的なケア>
・疼痛コントロール:鎮痛薬を用いて痛みを緩和し、安楽な時間を確保する
・症状緩和:呼吸困難や吐き気などを和らげるための医療的処置を行う
・栄養管理:経口摂取が難しい場合は、点滴や栄養補助食品を活用して体力維持を支援する
・清潔保持:清拭や口腔ケアで体を清潔に保ち、感染予防や気分の安定を図る
・床ずれ予防:体位変換や専用マットレスを用いて褥瘡を防ぐ
これらの身体的ケアを総合的に行うことで、患者様ができるだけ安楽に過ごし、尊厳を保ちながら生活の質(QOL)を維持できます。
②精神的なケア
精神的なケアは、患者様が安心して過ごせる環境づくりと、心の支えを提供することを目的としています。照明や室温を整えた落ち着いた空間に、好きな音楽や思い出の写真・品物を取り入れることで、患者様はゆったりと過ごせます。
さらに、患者様の気持ちに耳を傾け、感情を受け止める傾聴も大切なサポートの一つです。会話やスキンシップを通じて不安や孤独感を和らげることで、心穏やかに過ごせる時間を増やします。
③社会的なケア
社会的なケアは、患者様やご家族が抱える経済面・生活面の不安を減らすために行われます。
<社会的なケア>
・遺産相続や遺品整理の支援:ソーシャルワーカーや専門職と連携して行う
・介護方法の指導:家族が適切にケアできるよう助言や実技を通じてサポートする
・家族への精神的支援:介護に伴う疲労や孤独感を和らげるカウンセリングや相談体制を整える
・制度利用の案内:行政の支援制度や介護保険サービスの利用方法を紹介する
これらの取り組みにより、患者様とご家族が共に安心して、最期の時間を過ごせる環境を整えられます。
④スピリチュアルなケア
ターミナル期には、身体的苦痛だけでなく「生きる意味の喪失」や「死への恐怖」といったスピリチュアルペイン(霊的な苦痛)も生じます。個人やその人生観を尊重し、寄り添うケアが重要になります。
ターミナルケア(終末期医療)を受けられる場所
ターミナルケアを受ける場は「病院」「ホスピス型住宅・介護施設」「自宅」の3つに大別されます。本章では、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて解説します。
病院
病院でのターミナルケアは、専門医や看護師が常駐し、緊急時にも迅速な対応が可能です。さらに、高度な医療機器を利用でき、痛みや呼吸困難などの症状緩和にも優れています。
<病院のメリット・デメリット>
・メリット:24時間体制で医療スタッフが対応。検査や治療など医療的支援が充実している
・デメリット:病院の規則や生活リズムに従う必要がある。面会制限によりご家族との時間が減り、孤独感を抱きやすい
ホスピス型住宅・介護施設
ホスピス型住宅や介護施設は、病院より家庭的で落ち着いた雰囲気があり、専門スタッフによるケアを安心して受けられる環境が整っています。
<ホスピス型住宅・介護施設のメリット・デメリット>
・メリット:家庭的な雰囲気でリラックスして過ごせる。看護師や介護職員が常駐し、痛みや不安への支援が充実
・デメリット:入居費や月額費用が高額になる場合がある。利用対象が末期がんなどに限られることが多い
自宅(在宅ケア)
自宅でのターミナルケアは、住み慣れた環境でご家族と過ごせるため、患者様の生活スタイルに合わせた柔軟なケアが可能です。
<自宅のメリット・デメリット>
・メリット:ご家族と共に過ごす時間を大切にできる。生活習慣や希望に合わせた個別ケアが可能
・デメリット:ご家族の介護負担が大きくなりやすい。医療体制が限定され、急変時の対応が難しい
ターミナルケア(終末期医療)にかかる費用
ターミナルケアの費用は、受ける場所やサービス内容によって大きく変わります。本章では、代表的な3つのケースをまとめました。
<ターミナルケア(終末期医療)にかかる費用>
・病院:医療保険が適用され、自己負担は1〜3割程度。1日の入院費用は5,000〜15,000円前後で、食事代や差額のベッド代が加算される
・介護施設:月額15〜30万円程度が目安。介護保険が適用されるものの、医療処置や介護度に応じて追加費用が発生する
・自宅(在宅ケア):訪問診療は1回約2万円、医学管理料が5,000円前後。薬代や交通費など保険適用外の支出もあり、家族の負担が大きくなりやすい
費用は、選択する環境やサービスによって差があるため、早めに見積もりを確認し、準備しておきましょう。
また、医療費の高額療養費制度や介護保険の自己負担上限の適用などを利用することで、経済的不安を軽減できる可能性がありますので、行政機関や専門家に相談してみましょう。
まとめ
ターミナルケアは、患者様が人生の最終段階を穏やかに、自分らしく過ごすために欠かせない支援です。身体的・精神的・社会的なケアを組み合わせることで、生活の質(QOL)は大きく向上します。また、病院・施設・自宅などの選択肢には、それぞれ利点と課題があり、患者様本人の希望やご家族の状況を踏まえた検討が重要です。
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