コラム
重症筋無力症の7つのリハビリテーション方法!治療のポイントも解説します
重症筋無力症(MG)は、筋肉を動かす神経と筋肉のつながりに異常が生じ、力が入りにくくなる自己免疫疾患です。発症すると「まぶたが下がる」「物が二重に見える」「食べ物を飲み込みにくい」など、日常生活に支障をきたす症状が現れます。
薬物療法と併せてリハビリテーションを取り入れることで、筋力や呼吸機能を維持し、生活の質を保つことが可能です。本記事では、重症筋無力症の基礎知識と7つのリハビリテーション方法、実施する際のポイントについて解説します。
重症筋無力症(MG)とは?
重症筋無力症(MG)は、本来は体を守るはずの免疫が、誤って神経と筋肉の接続部分を攻撃し、神経から筋肉への信号がうまく伝わらなくなる自己免疫疾患です。その結果、体を動かす仕組みが妨げられ、力が入りにくい・すぐに疲れるといった症状が出やすくなります。
代表的な症状は、以下のとおりです。
<代表的な症状>
・眼瞼下垂(まぶたが下がる)
・複視(物が二重に見える)
・四肢や体幹の筋力低下
・嚥下障害(飲み込みづらさ)
・構音障害(発声のしにくさ)
症状は1日の中で変化があり、午前中は軽くても、夕方以降に悪化しやすい特徴があります。治療は、コリンエステラーゼ阻害薬や免疫抑制薬などが中心です。重症化すると、重度の四肢不全麻痺や、呼吸筋の筋力低下による「筋無力症クリーゼ」と呼ばれる呼吸不全を起こす危険性があることを理解しておきましょう。
重症筋無力症の7つのリハビリテーション方法
重症筋無力症(MG)は、筋力低下や疲れやすさが特徴で、リハビリテーションは生活の質を守るうえで大切な支援です。本章では、7つの方法を紹介します。
①筋力トレーニング
筋力トレーニングは、重症筋無力症で弱りやすい筋肉を維持する目的で行われます。ただし、強い負荷や長時間の運動は疲労が増強し、かえって逆効果になるため、注意が必要です。
椅子から立ち上がる練習や負荷の軽いゴムバンドで運動するなど、日常に取り入れやすい内容を短時間だけ行い、必ず休憩を入れるように心がけましょう。無理をせず、体調に合わせて継続することが、筋力維持につながります。
②ストレッチ
筋力低下が進み、体がこわばりやすくなることで動きづらさや痛みにつながりますが、ストレッチをすることで筋肉や関節を柔らかく保てます。無理のない範囲で、腕や足をゆっくり伸ばす動きを習慣化することにより、関節の動きを維持しやすくなります。呼吸を止めずにリラックスして行うと疲労感が少なく、続けやすいです。
③バランストレーニング
重症筋無力症では、筋力低下により転倒リスクが高まります。そのため、姿勢を安定させるバランストレーニングが欠かせません。片足立ちや、座った状態で上体を左右に揺らすなどの練習が効果的です。
安全のために、慣れないうちは壁や手すりにつかまりながら行い、少しずつトレーニング時間を延ばしていきましょう。体幹を安定させることで歩行も楽になり、日常生活の安全性を高められます。
④呼吸トレーニング
重症筋無力症では呼吸筋が弱まり、息苦しさや痰の排出困難が起こる場合があります。呼吸トレーニングでは、腹式呼吸や口すぼめ呼吸を繰り返すことで、肺のはたらきを助けます。無理のない範囲で継続することで、呼吸筋の機能が保たれ、呼吸困難や肺炎のリスクを減らせるでしょう。
⑤作業療法
作業療法では、食事や着替えなどの日常動作を、少しでも自分で行えるようなアイディアを提供します。例えば、重い鍋の代わりに軽い調理器具を使う、衣服をマジックテープ付きに替えるといった方法です。
また、無理をせず、体調に合わせて活動を調整する方法もアドバイスします。家事や作業を一度にまとめて行うのではなく、小分けにして合間に休憩を入れると、疲れをためにくいです。こうした工夫を重ねることで、心にゆとりを持って過ごしやすくなります。
⑥生活動作訓練
生活動作訓練では、起き上がりや歩行、階段昇降など、日常で必要な動作を練習します。症状の程度に合わせてベッドの高さを調整したり、手すりを活用したりする方法を学びます。
この訓練の目的は、安全性を確保しながら、自立した生活を続けられることです。小さな成功体験を積み重ねることで「自分でできる」という自信が育ち、心身の活力が高まります。
⑦構音・嚥下(こうおん・えんげ)訓練
重症筋無力症では、口や舌、喉の筋力低下によって構音や嚥下に障害が生じ、会話や食事が難しくなることがあります。こうした症状は、生活の質を大きく下げる要因となるため、言語聴覚士の指導のもとで訓練を行います。
口や舌を使った発音練習、飲み込みやすい姿勢の工夫、食事内容の調整などが代表的な内容です。また、むせを減らす工夫として、飲み物にとろみをつけることで、誤嚥性肺炎の予防につながります。
リハビリテーション治療のポイント
重症筋無力症のリハビリテーションは、方法を誤ると症状を悪化させる恐れがあります。本章では、安全下で効果を得るための3つのポイントを見ていきましょう。
過度な運動は避ける
重症筋無力症では、過度な運動が筋肉の疲労を増し、かえって症状を悪化させる可能性があります。特に、体温の上昇は筋力低下を助長するため、長時間の運動や暑い環境での活動は控えましょう。短時間の運動を行ったあとは、十分に休憩を取り、体をクールダウンさせることがポイントです。
運動強度を調節する
リハビリテーションは低い強度から開始し、体調に応じて段階的に負荷を上げることが基本です。急な強度のアップは、過度な運動のときと同じく症状悪化につながるため、避けましょう。症状の出方には個人差があり、日ごとの体調によっても変わります。
医師やリハビリテーション専門職と相談しながら、その日の状態に合わせて強度を調整することで、安全に身体機能を維持できます。
疲れているときは行わない
重症筋無力症は、夕方以降に症状が強まりやすく、疲労が重なると動作が急に困難になる場面があります。そのため、疲れているときは無理に運動を続けず、思い切って休むことも大切です。
体調が良い時間帯に短時間で取り組むほうが効果的で、安全性も高まります。家族も頑張りすぎないことを理解して、ご本人のペースを見守りながら支援しましょう。医師・療法士の指導を受け、相談しながら取り組んでください。
まとめ
重症筋無力症は、筋力低下や疲労感によって、生活に大きな制限をもたらす難病です。しかし、適切なリハビリテーションを取り入れることで、症状の進行を緩やかにし、生活の質を維持できます。筋力・呼吸・嚥下など多方面への支援を組み合わせ、専門職と家族が連携して支援することが、より良い生活をもたらします。
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