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2025.10.09

コラム

多発性硬化症のリハビリテーション方法を知りたい!治療の注意点も解説

多発性硬化症(MS)は進行性の病気であり、症状が多岐にわたるため、専門的なリハビリテーションが生活の質を大きく左右します。ご本人だけでなく、介護に関わるご家族にとっても「どのような方法を取り入れるとよいのか」「注意すべき点は何か」を理解することが重要です。

本記事では、多発性硬化症の概要から、リハビリテーションの具体的な方法、実践時の注意点まで幅広く解説します。

多発性硬化症(MS)とは?

多発性硬化症(MS)は、自己免疫の異常によって中枢神経の髄鞘が傷つき、情報伝達が妨げられる病気です。髄鞘とは、神経を覆う絶縁体のような構造で、電気信号が効率よく伝わるように手助けをしています。これが損傷すると、信号が遅れたり途切れたりして、運動機能や感覚にさまざまな障害が生じます。

原因は、完全に解明されていません。しかし、その背景には、遺伝や環境の影響が関わっていると考えられています。有病率は、欧米など高緯度地域で高く、日本でも近年は、10万人あたり約14〜18人と増加傾向です。遺伝的要因に加え、ウイルス感染やビタミンD不足、喫煙など、複数の因子が発症に関与するといわれています。

また、代表的な症状として、以下の内容が挙げられます。

<代表的な症状>
・視覚障害(視力低下や複視)
・手足のしびれや脱力
・歩行障害
・平衡感覚の異常
・排尿障害
・認知機能の低下

加えて、強い倦怠感や抑うつ症状が現れる方もおり、身体面だけでなく、精神的にも影響が及ぶ点が特徴です。

治療は、大きく「再発予防」「症状の緩和」「リハビリテーション」の3つに分けられます。特にリハビリテーションは、出てしまった症状の改善だけでなく、病気の進行を緩やかにし、生活の自立を支えるために欠かせない取り組みです。

多発性硬化症の7つのリハビリテーション方法

リハビリテーションの内容は、個々の症状や生活状況に合わせて調整することが求められます。本章では、代表的な7つの方法について紹介します。

➀筋力トレーニング

多発性硬化症では、神経の損傷により筋力が低下しやすく、その結果として活動量も落ちやすくなります。活動量が減ると、さらに筋力低下が進む悪循環につながるため、積極的に筋力を維持することが大切です。特に、下半身や体幹の筋力は、歩行の安定や転倒予防に直結します。

スクワットや足上げ運動、椅子からの立ち座りなど、日常生活に近い動作を取り入れると効果的です。運動は軽い負荷から始め、症状に合わせて強度を調整しましょう。過度の疲労を避けるため、短時間に分けて行うことや、適度な休息を挟むことも重要です。

また、体温の上昇で症状が悪化することがあるため、室温管理や水分補給にも配慮しながら取り組みましょう。

②ストレッチ

筋肉のこわばりや関節の動かしにくさは、多発性硬化症の方によく見られる症状です。ストレッチで筋肉を柔らかく保つことは、安定した歩行や姿勢バランスの保持を助けます。また、筋肉が硬くなることで、関節の動きが制限される状態(拘縮)を予防することにもつながります。

特に、ふくらはぎや太ももの裏側など、足の筋肉は硬くなりやすいため、積極的にストレッチをしましょう。呼吸を止めずにゆっくり伸ばし、1回につき20〜30秒ほど保持します。ご家族が補助しながら行うと、無理なく続けられます。

③バランストレーニング

バランス感覚の異常は転倒の原因となり、骨折や入院につながることがあるため、筋力低下と共に強化したい症状の一つです。具体的には、片足立ちやつま先立ち、バランスボールを使った運動などがあります。

転倒のリスクを回避するために、慣れないうちは壁や手すりを支えにして安全を確保し、徐々に支えを外すように進めます。ご自宅でトレーニングをする場合は、転倒防止マットを使用すると安心です。

④有酸素運動

有酸素運動は、心肺機能を維持し、慢性的な疲労感を減らすために欠かせません。ウォーキングや自転車エルゴメーター、水中歩行などが適しています。

大切なのは、無理をしないことです。呼吸が苦しくならず、会話できる程度の強さを目安に、体調に応じて時間や回数を調整しましょう。体温が上がりすぎると症状が悪化するため、夏場は室内で行うなど工夫が必要です。

⑤水中療法

水中療法は、水の浮力により体重が軽減されるため、関節や筋肉への負担を抑えながら全身運動が行えます。転倒の危険が少なく、歩行やバランス練習を安全に取り入れられる点も、大きなメリットです。

さらに、水中は体温が上がりにくく、症状の悪化を避けながらトレーニングを継続できる環境です。水中歩行やストレッチ、軽い水泳は、筋力や柔軟性の維持にも有効です。温水プールであれば、筋肉の硬さをほぐす効果も期待できます。セラピストやご家族の見守りのもとで取り組めば、安心して長期的に続けやすいリハビリテーションとなるでしょう。

⑥作業療法

作業療法は、食事や着替え、掃除、買い物などの日常生活動作を練習し、生活の自立を目指すリハビリテーションです。個々の症状に応じて補助具を導入したり、住環境を調整したりすることで、ご本人様の生活の負担を減らせます。

また、手先の細かい動きを促すリハビリテーションも含まれ、書字や調理などの日常生活に必要な作業練習も行われます。自分にできることが分かるため、精神的な自信を取り戻す効果も大きい点が特徴です。

⑦構音・嚥下(こうおん・えんげ)訓練

言葉が出にくくなったり、飲み込みにくくなったりする症状も、多発性硬化症に見られます。これらは生活の質を下げるだけでなく、誤嚥性肺炎などの重大な合併症につながるため、外せない訓練の一つです。

言語聴覚士による発声練習や呼吸法、飲み込みのトレーニングにより、会話や食事がしやすくなります。食事形態を調整することも、嚥下障害のリハビリテーションの一環です。

リハビリテーション治療の注意点

リハビリテーションを安全に続けるためには、いくつかの注意点があります。まず、体温上昇に気を付けることです。多発性硬化症は、体温が高くなると症状が悪化しやすいため(ウートフ現象)、運動は涼しい環境で行い、こまめな水分補給を心がけましょう。

次に、疲労のコントロールです。強い疲労感は病気の症状そのものであり、無理して運動を続けると逆効果になります。その日の体調を見極めながら、短時間のセッションを積み重ねるほうが効果的です。

さらにリハビリテーションは、続けることに価値があります。1日休んだからといって効果がなくなるわけではなく、数ヶ月単位で積み重ねることにより、初めて成果が出ます。家族や介護者が一緒に取り組む姿勢を見せることで、本人の意欲も高まるでしょう。

まとめ

多発性硬化症は進行性の病気ですが、リハビリテーションによって生活の質を守り、できる限り自立した生活を続けることが可能です。筋力を維持し、バランスを整え、呼吸や嚥下機能をサポートするリハビリテーションを組み合わせることで、症状の進行を緩やかにできます。

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