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NEWS & COLUMN

2024.09.25

コラム

ご高齢者の食事と栄養について

はじめに

年齢を重ねると自然と食べ物の嗜好も変わってきます。「油ものが苦手になった」「さっぱりする物が欲しくなった」など変化が生じ、脂っぽいものを敬遠しがちになってしまいます。とはいえ、体に必要な栄養素はきちんと摂取しなければ健康状態に悪影響を及ぼしかねません。特にご高齢者の方は食べる量が少なくなる方も多いのではないでしょうか。
今回はご高齢者の食事の在り方や栄養についてお話していきたいと思います。

ご高齢者の食欲低下はなぜ起こるのか

ご高齢者の食欲低下は、免疫力の低下や体力の低下、骨や筋肉量の低下などを引き起こし、QOL(注1)を長期にわたって低下させる大変危険なものだと言われています。
当然ながらこの食欲の低下は、体重の減少に直結します。これは、加齢によって食事や栄養に深い関わりのある器官に変化が生じるためだと言われています。
加齢に伴うメカニズムは、「脳における機能異常」と「臓器における機能異常」と主に2つに分けられることができるそうです。(図1)
この中で比較的思い当たる節が多く食欲低下につながるものを挙げてみましょう。

  • 唾液分泌の低下によって乾いたものが食べにくくなる
  • 入れ歯や歯の欠損
  • 呼吸障害や消化不良などの消化器系機能の低下
  • 運動量の低下に伴う骨格筋量の低下による必要エネルギーの低下
  • 視覚の衰えにより料理がおいしく見えない、食べ残しが起きる

上記項目で身に覚えのある項目もあるのではないでしょうか。

(図1)

(図1)引用:琉球大学第二内科 加齢に伴う摂食低下のメカニズムより抜粋➚

(注1) QOL=Quality of life(クオリティ オブ ライフ)
総合的な活動(生きがい、満足度、活力など)が含まれ、また心身的な苦痛の軽減なども含まれた「生活の質」「生命の質」を指します。

ご高齢者にとって食べることの大切さ

「食べること」というのは、実は口の中に「食べ物を入れ、噛み、飲み込む」だけの行為ではなく、買い物や食事作り、後片付けといった一連の生活行為も伴っていると言われています。この一連の生活行為は、買い物へ出かけることによる地域住民とのコミュニケーションや、歩くことによる健康の維持・増大などが伴ってきます。そしてこれらを朝・昼・晩と繰り返すことができれば、そこに「生活リズム」が発生します。規則正しい生活リズムは健康維持に大きく寄与し、様々な臓器の活性化や神経調整、消化酵素やホルモンの分泌などのバランスを保ち、整えることに繋がるのです。
そうすることでQOLが向上し、より良い生活の質を手に入れることができます。

(図2)

(図2)引用:厚生労働省 高齢者にとっての「食べること」の意義➚

3大栄養素の摂取基準

多種多様な栄養素の中で、3大栄養素は特に身体を動かすために必要なエネルギー源で、「タンパク質」「脂質」「炭水化物(糖質)」から成り立っています。そして食品に含まれているカロリーは、エネルギーの量(熱量)を測るための指標となっています。
ちなみにカロリーは「cal」で表記され、1gの水の温度を1℃上昇させるために必要なエネルギー(熱量)を1calとし、1㎏の水を1℃上昇させるために必要なエネルギーの場合は1kcalと表示します。では、この3大栄養素を基準にしたとき、ご高齢者の方はどれだけの量を摂取する必要があるのでしょうか、エネルギーも含めて見ていきましょう。

推定エネルギー摂取量(kcal/日)

◆身体活動レベルについて◆(注2)
※身体活動レベルは、低い、ふつう、高い、の3レベルとして、それぞれ1、2、3と示した。

  1. 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合(75歳以上の場合は、自宅にいてほとんど外出しない方。高齢者施設で自立に近い状態で過ごしている方も適用)
  2. 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤・買い物・家事、軽いスポーツなどのいずれかを含む場合(75歳以上の場合は、自立している人相当の方)
  3. 移動や立位の多い仕事への従事者。スポーツなど余暇における活発な運動習慣を持っている場合。

(注2)引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(概要)」の6項食事摂取基準(別添)より➚

3大栄養素の必要摂取量


推定エネルギー摂取量は、活動レベルによって数値が変わっているのがわかります。活動量が多ければそれだけエネルギーも消費するので、その分摂取しないといけないわけですね。
ちなみにこの摂取エネルギーには基礎代謝に必要な量も含まれており、基礎代謝は睡眠、呼吸など、動かなくても消費するエネルギーのことを言います。
カルシウムやビタミンなどの摂取基準量など、さらに詳しく知りたい方は、下記リンク(注3)を観ていただくと良いかと思います。
(注3) 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)スライド集➚

3大栄養素が多く含まれる食べ物

タンパク質
  • 肉類(特にささみ、鶏の胸肉、豚のもも肉など)
  • 魚介類(特にいわし、さくらえび、まぐろ、かつおなど)
  • 卵白
  • 乳製品 など
脂質
  • 食用油
  • 肉類(特に脂身、鶏肉の皮、ソーセージなど)
  • 魚介類(特にサンマ、サバ、ハマチなど)
  • 卵黄 など
炭水化物
  • お米
  • パン
  • 麺類
  • じゃがいも
  • はちみつ など

まとめ

食べるということは、生きていくために必要な栄養素を摂取する重要な行為です。しかしそれだけではなく、食べることで病気に対する抵抗力が付き、場合によっては誰かと一緒に食べることによってコミュニケーションも活発になり、生活に充実感を得ることもあるでしょう。
加齢によって食欲も低下していくことは否めませんが、日々の規則正しい生活と食事について見つめ直すことで、改めて食べることの大切さを実感するときが来るかもしれません。

これを機にいったん立ち止まって、自分の食生活や日常生活を俯瞰的に見直してみるのも良いかもしれません。

 

 

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